2021年 上半期ベスト20(アルバム・ミニアルバム編)
楽曲編はこちら。
去年に引き続き、音楽業界にとって試練が続いている2021年。アーティストの感染、ライブの中止・延期、公演の許容キャパの変更などに演者もファンも相変わらず振り回されている。中にはアーティスト側が業界のイメージを汚しかねないようなやらかしをしてしまうという出来事もあった。コロナ禍で解散・活動休止せざるを得ないアーティストや、脱退を決意するメンバーも出てきている。明るい気持ちを保つのが非常に難しくなっている日々だ。それでも音楽は決して不要不急ではないと信じている。
- 20位:waterweed『Deep inside + Unknown best』
- 19位:Helloween『Helloween』
- 18位:GASTUNK『VINTAGE SPIRIT, THE FACT』
- 17位:Gojira『Fortitude』
- 16位:V.A.『茨城大爆発』
- 15位:Lyrical School『Wonderland』
- 14位:ANNALYNN『A CONVERSATION WITH EVIL』
- 13位:LOVEBITES『GLORY, GLORY, TO THE WORLD』
- 12位:cali≠gari『15 予告版』
- 11位: Survive Said The Prophet『To Redifine/To Be Defined』
- 10位:ROTTENGRAFFTY『Goodbye to Romance』
- 9位:Aimer『Walpurgis』
- 8位:己龍『曼珠沙華』
- 7位:SANTENA『I want a car』
- 6位:Architects『For Those That Wish To Exist』
- 5位:MUCC『明星』
- 4位:BAND-MAID『Unseen World』
- 3位:the GazettE『MASS』
- 2位:While She Sleeps『SLEEP SOCIETY』
- 1位:Flesh Juicer(血肉果汁機)『GOLDEN太子BRO』
20位:waterweed『Deep inside + Unknown best』
以前から名前だけは知っていた、ベテラン国産メロディック・ハードコアバンド。ちょうど新曲1曲を含むベスト盤をリリースしたのをタイミング良く知ったのでチェックしてみたところ、ドンピシャで好みだと判明。
完全にカタカナ発音の英語は曲によっては気になってしまうが、ザクザクしたメタリックなギターとメロコアの疾走感の相性は当然抜群。こんなご時世じゃなかったら夏の野外で観てみたいと思わせてくれる。
19位:Helloween『Helloween』
ジャーマンメタルの帝王の16枚目。 2016年に黄金期を支えたKai Hansen (Gt/Vo)とMichael Kiske (Vo) がバンドに復帰し、トリプルヴォーカル編成になったが、本作はその編成としての初のアルバム。もはやアベンジャーズ並みのオールスターが揃ったバンドになっているが、音楽性は良くも悪くも安定のHelloween。声質の違う3人のヴォーカルが良いアクセントになっているが、個人的にはずば抜けたキラーチューンが1曲ほしかったと思う。カッコいいのは間違いない。
18位:GASTUNK『VINTAGE SPIRIT, THE FACT』
日本のハードコア/メタル・クロスオーバーの始祖的存在であり、V系シーンにも多大なる影響を与えたレジェンドが、まさかの33年ぶりに新アルバムをリリース。
内容は、かつてのハードコア感も残しつつ、貪欲に様々なジャンルの要素を取り入れた実験的なロックとでも言うべきか。圧倒的なベテランなのに、音楽的なハングリー精神はまだまだ持ち合わせているというのが伝わってくる力作。
17位:Gojira『Fortitude』
フランスが誇るグルーヴメタル・バンドの7作目。2010年代以降は特に名前を耳にする機会が多かったが、個人的には本作で初めて音に触れることになった。グルーヴメタルにメタルコアやデスメタル要素を織り交ぜ、全体的にテクニカルで摩訶不思議な空気感が特徴的。ジャケットからも受けて取れる民族音楽の要素も要所要所に登場していて、全体的に気付いたら虜になっているような音像が魅力的。
16位:V.A.『茨城大爆発』
コロナ禍により苦しむ茨城音楽シーン活性化のためのプロジェクト"ヒカリノハコ"からリリースされた2枚組オムニバス盤。茨城出身、もしくは茨城出身のメンバーが在籍するアーティスト総勢25組参加していて、キャリアもジャンルもてんでバラバラ。若手からベテラン、弾き語りからゴリゴリのヘヴィ・ロックまで、茨城の音楽シーンの個性や空気感が堪能できる作品。特に2枚目の後半の豪華さがスゴイ。地元/故郷の音楽シーンを支えるためにメジャーデビュー経験もあるMUCCや山田将司(THE BACK HORN)等のアーティストも普通に参加している点に胸が熱くなる。すべての楽曲が書き下ろしの新曲なのも素晴らしい。
15位:Lyrical School『Wonderland』
日本のヒップホップ・アイドルグループの6枚目。存在は前から知っていたがちゃんと曲を聴くのはこれが初めて。思っていたよりだいぶ"アイドル感"が少なく、言われなければ普通に女性ヒップホップグループだと思ってしまうくらい楽曲と歌唱がクール。そこにスパイス程度に登場するアイドルらしいポップさが良いアクセントになっていて癖になる。メンバーの声質がそれぞれ違うのも良い。
14位:ANNALYNN『A CONVERSATION WITH EVIL』
タイが誇るメタルコアバンドが日本のCrystal LakeのレーベルであるCUBES RECORDSから最新作をリリース。タイ出身ではあるが、歌詞や曲名は英語のため聴く上でのハードルは高くない。モダンなジェント要素を取り入れたメタルコアが主軸で、楽曲によってはメロディアスなクリーンも登場する。日本のColdrainからMasatoやオーストラリアのThy Art is MurderからCJ McMahonが客演してたりするなど、アジアのシーンからグローバルな繋がりを構築できているということも伺える。タイのシーンに対する興味をそそられると同時に、アジア圏のバンド同士の交流ももっと増えて欲しいと思わせてくれる良作。
13位:LOVEBITES『GLORY, GLORY, TO THE WORLD』
日本のガールズメタルシーンで一際海外での評価・知名度が高いバンド。本作も安定の高クオリティーのパワー・メタルを奏でていて、少しではあるが前作と比べて楽曲がコンパクトになっている印象がある。おかげで個人的にはより聴きやすくなったと思う。 ただのパワー・メタルに留まらないリフワーク等、実験的な部分も感じられる。
12位:cali≠gari『15 予告版』
密室系の元祖が秋に出す新アルバムへのプレビューとしてリリースしたミニアルバム。90年代後半〜00年代初頭の作品と似た"予告版"という形式を使用してたり、当時の予告版に収録していたコマーシャルを再現したるするなど、スタイル面で懐かしさを感じる。楽曲は狂気と爽やかさを兼ね備えた再結成後のcali≠gariが培ってきた音像が上手くブレンドされていて、アルバムへの期待が膨らむ。個人的にはアルバム『14』とミニアルバム『憧憬、睡蓮と向日葵』に通ずる空気感も感じた。限りなく透明に近いレモン盤に収録されている「「依存」という名の病気を治療する病院」の再録も絶品。
11位: Survive Said The Prophet『To Redifine/To Be Defined』
バンド結成10周年を記念した2枚組の再録ベスト・アルバム。バンドの歴史の中で重要な曲や、ライブの定番曲、ファン人気の高い楽曲を網羅した選曲となっている。サバプロに限らず、どうしても再録となると原曲と比べてしまいがちで、 元の音源を聴き込んでいる分だけ再録版に慣れなかったりする。本作にも個人的にそれに該当すると感じた曲もあったが、作品自体が一発録りでレコーディングされたこともあり、どちらかと言えばスタジオライブを聴いている感覚になった。初心者にこのバンドを勧める際にはちょうど良い入門編にもなると思う。
余談ではあるが、本作リリース後の4月にYudai (Ba)が脱退したが、正直バンドの今後のサウンドにそれがどういう影響を与えるかが気になる。スクリームやシャウトといった、サバプロの楽曲の攻撃的な要素は彼が担っていたため、今後そういったヘヴィな要素が減ってしまわないか不安だ。
10位:ROTTENGRAFFTY『Goodbye to Romance』
国産ラウドロック/ミクスチャー・ロックの代表格であるロットンが史上初のアコースティック作品をリリース。まさかすぎる発表だったが、元々光っていた彼らのメロディーセンスの良さを堪能できる素晴らしい仕上がりになっている。新曲も既存曲のリアレンジも美しいし、ラストのインスト曲も引き込まれる音像だ。本来のライブができない昨今のご時世によって、普段とは真逆のサウンドの作品を作るきっかけを得たのであれば、うまくこの状況を活かせたアーティストの例と言えると思う。
9位:Aimer『Walpurgis』
おそらくアニソン歌手として広く知られているであろう女性シンガー。確かにアニメタイアップは多いし、自分もFateシリーズから彼女の歌を知ったが、そういった事情を抜きにしてもシンプルに歌唱が素晴らしい。低めで少しハスキーな声質がどこかダークな楽曲たちと抜群にマッチし、幻想的な世界観に引き込んでくれる。徹底的に作り込まれた演出での完全再現ライブをやってほしいと思うくらい濃密。それをもっても、多くの曲がタイアップになっているだけあり、ちゃんと楽曲として聴きやすくなっているのが流石。
8位:己龍『曼珠沙華』
「和製ホラー」と「痛絶ノスタルジック」をコンセプトとする実力派V系バンドの7作目。昨年の自粛期間中に彼らのYouTubeチャンネルの動画を見つけ、世界観を重視しているバンドが芸人顔負けの体の張りっぷりを見せている様子に引き込まれ、どんどんファンになっていった。ニューメタルや80’sメタルの要素も強いが、やはり耳を引くのはそこに絶妙に混ぜ込まれている和楽器。時には綺麗に、時には狂気的にバンドのサウンドと融合しているのが非常に癖になる。台湾のCHTHONICを思い出す箇所もあった(彼らほどメタル直球の音楽性ではないが)。過去の作品をある程度聴いた印象では、ヘヴィミュージックの観点からだと少々ミックスがスカスカ気味に感じたが、本作ではそれが大幅に改善されているのもポイントが高い。
7位:SANTENA『I want a car』
越生が生んだ奇才ヒップホップグループSUSHIBOYSよりSANTENAがソロデビュー。「車の購入費用を稼ぐための作品です。何故なら私は歩くのが大嫌いだからです」という本人のコメントも含めセンスが最高。SUSHIBOYSでの相方FARMHOUSEと比べてSANTENAはどこか無骨というか強靭さが感じられる声質とラップスタイルなので、当然本作ではそれが強く反映されている。ユーモアあり、かっこよさあり、斬新さありというSUSHIBOYSスタイルはソロでも継承されている。
6位:Architects『For Those That Wish To Exist』
Bring Me The HorizonやWhile She Sleeps等と並んでイギリスのシーンを代表するバンドが衝撃作を投下。これまでのテクニカルで複雑な要素はなりを潜め、"シンプルさ"に重点を置いているこのサウンドの攻撃力は凄まじい。音を詰め込めば良いってもんじゃないことを教えてくれる。テクニカル化が進んだメタルコアに改めて"間とタメ"の有用性を見せつけているかのよう。キャッチーさやメロディアスな要素も取り入れているが、それらの楽曲でもバンドが作り出す音像にはちゃんと"空間"が感じられる。
5位:MUCC『明星』
結成時からのドラマーSATOち がバンドを離れること昨年末に発表。本作はバンドを長年支えた彼を送り出す餞として、SATOち 作曲の楽曲を集めたベスト・アルバムとなっている。一部の楽曲は再録されている。SATOち はMUCCのメロディアスな面に大きく貢献していたことがよくわかる選曲で、ライブでも重要な役割を担っている曲も多い。彼の脱退を受けて書き下ろされた表題曲「明星」は涙なしでは聴けないMUCCらしい哀愁と疾走感に溢れた名曲。SATOち の脱退は本来5月だったが、コロナの影響でツアーが延期になったため、8月まで在籍が伸びている状態だ。彼の居ないMUCCを想像するのが難しいが、SATOち にもMUCCにも幸福な未来が待っていることを願う。
4位:BAND-MAID『Unseen World』
今やCrystal Lakeと並んで海外で一番知名度が高い日本のロック/メタル・バンドとなったBAND-MAID。ハードロックから徐々にメタル要素が強まってきている印象がある彼女たち。前作はそこにポップス要素を取り入れた少々実験的な作風だったが、本作は完全にキャリアのいいとこ取りと言えるような"らしさ"に溢れたアルバムとなっている。あえて原点回帰的にハードロックに挑戦した楽曲もあれば、過去最速のテンポで攻撃的に爆走するメタル曲もあり、さらには小鳩ミクが単独でヴォーカルを担当する楽曲もあるという充実っぷり。入門編にもピッタリな名作だと思う。
3位:the GazettE『MASS』
名実ともにV系界のトップバンドの一つになっていると言っても過言ではないthe GazettE。2015年の『DOGMA』、2018年の『NINTH』と名盤を連発してきているが、本作も見事にその仲間入りを果たしている。ヘヴィさ、ダークさ、世界観の濃さ、どれをとっても「the GazettE及びV系の王道とは」に対する答えを提示してくれているような楽曲ばかり。それでもって焼き直しではなく、ちゃんと新しいアプローチやテイストのフレーズを取り入れているのが流石。V系はもちろん、シンプルに日本のヘヴィ・ミュージックを代表するバンドのひとつなのは間違いない。
2位:While She Sleeps『SLEEP SOCIETY』
個人的には前作『SO WHAT?』がツボに刺さりまくった超名盤だったので、自ずと本作に対する期待も膨らんでいたが、平然とそれを超えてくるあたり本当に素晴らしいバンドだと思う。エモーショナルな歌メロ、インダストリアルなデジタルビート、このバンド独特の跳ねるようなリズム感のブレイクダウン、シリアスなテーマの歌詞、どれをとっても一級品。
1位:Flesh Juicer(血肉果汁機)『GOLDEN太子BRO』
台湾のシーンを牽引するFlesh Juicerが元日にリリースした傑作3rdアルバム。メンバーチェンジを経て、バンドの雰囲気的にも音楽的にも新境地を見せてくれていて、良い意味でより肩の力が抜けた"シンプルに音楽を楽しむ"という姿勢が感じられる意欲作。
詳しい感想はこちらのレビューを参照:
まとめ
- Flesh Juicer(血肉果汁機)『GOLDEN太子BRO』
- While She Sleeps『SLEEPS SOCIETY』
- the GazettE『MASS』
- BAND-MAID『Unseen World』
- MUCC『明星』
- Architects『For Those That Wish To Exist』
- SANTENA『I want a car』
- 己龍『曼珠沙華』
- Aimer『Walpurgis』
- ROTTENGRAFFTY『Goodbye to Romance』
- Survive Said The Prophet『To Redifine/To Be Defined』
- cali≠gari『15 予告版』
- LOVEBITES『GLORY, GLORY, TO THE WORLD』
- ANNALYNN『A CONVERSATION WITH EVIL』
- Lyrical School『Wonderland』
- V.A.『茨城爆発』
- Gojira『Fortitude』
- GASTUNK『VINTAGE SPIRIT, THE FACT』
- Helloween『Helloween』
- waterweed『Deep inside + Unknown best』